旋律の受け渡し


 旋律の受け渡しはフレーズごとに区切って渡すだけなら、非常に簡単で説明すべきこともありませんが、金管アンサンブルの場合はいつも区切りの良いところで旋律を受け渡せるとは限りません。他の楽器に比べて何かと弱点の多い楽器ですから仕方がないとあきらめてください。特に金管楽器は跳躍が非常に困難なので、旋律が跳躍するときには2パート以上で旋律を交互に受け持つといった必要が生じます。このような立て込んだ旋律の受け渡しにはいろいろなテクニックが必要です。

 まず旋律の受け渡しに関する一般的な注意事項として最も気をつけなければならないのが、どのパートも単旋律でなぞったときに理解不能なリズムにならないようにすることです。金管アンサンブルはハンドベル・アンサンブルではありません。分けあった旋律も、ある程度見慣れたリズムに乗っていることが、アンサンブルを必要以上に難しくしないためにも大切です。また一般的に旋律を分け合ってテクニック的な難易度を下げると、アンサンブル的には難易度が上がります。つまりテクニック的に余裕がある場合は、無理に旋律を分け合うより1人で吹いたほうが簡単な場合もあり、アンサンブル的な難易度とテクニック的な難易度のどちらも下げるのは簡単にできるものではありません。どちらを取るかは奏者の演奏能力や合奏練習のできる回数などから編曲者が判断しなければなりません。以下に旋律を分け合った例を示します。


例1 D.スカルラッティ「ソナタ K.96」より

例1は旋律の跳躍部で旋律を受け渡した場合です。右手の旋律に注目してください。最もオーソドックスでかつ分かりやすい受け渡しです。リズム的に難しくなるようだったら音を補充してわかりやすいリズムになるように工夫しましょう。


例2 D.スカルラッティ「ソナタ K.64」より

例2は鍵盤楽器にありがちな音形を振り分けた場合です。これも右手の旋律を2本のトランペットに受け持たせています。気をつけなければならないのは、裏打ちがあまり長く続かないようにすることです。長ければ長いほど裏打ちはズレやすくなります。このような場合も次の例3のように表拍を補ったほうが良いかもしれません。


例3 J.S.バッハ「プレリュード BWV848」より

例3は反復音形を振り分けた例です。おもての拍に音があればそれだけで格段に数えやすくなり、ズレにくくなります。


例4 D.スカルラッティ「ソナタ K.519」より

例4は広音域にわたる左手の旋律を分けた場合です。受け渡すときに音が重なるようにすることで音量を一定に保つのが難しくなりますが、スムーズにつながるようになります。

S.ジョプリン「メープル・リーフ・ラグ」より

例5は極端な旋律の振り分け例です。アンサンブル的には難しくなりますが、テクニック的には難易度が下がっています。


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