和音の足し方、抜き方
和音の足し引きには前述の和音の基礎知識1、2で述べた知識が非常に重要です。これらをあらかじめお読みになった上でこの項をお読みください。
和音の足し方
和音を足すときは、先に説明した音の距離と音量バランスを考えて足りないと思われるところに補充していきます。一般には中音域を充実させるのがセオリーですが、音を重くしたくないときなどには高音域に音を配置します。また音と音の間を広く取ると、響きも広がりを持って爽やかな印象になりますが、離しすぎると各音が独立して聴こえてしまい、和音らしい一体感が得られなくなります。逆に音を密集させると、非常に重厚な響きが得られます。金管楽器では音を密集させたほうが効果的なことが多いようですが、前述したように低音部に音が密集し過ぎないように注意することが大切です。
さらにここで大切なのは、構成している3和音のそれぞれの以外の付加的な音はなるべく強くしないということです。このような音を強くすると、和音が非常に合わせづらくなります。その音が何か特別な意味を持つとき以外は、不必要に強調しないようにしましょう。
和音の足し方とは言いにくいですが、ペースラインをオクターブで重ねるのは良い方法です。低音部では音を離した方が良いというのは前にお話したとおりですが、逆を正せばオクターブくらい離れるのがちょうど良いということでもあります。単純なオクターブの重複でも、最低音部では非常に効果的で、和音が予想以上に重厚に響きます。
はっきり聴こえて欲しいという理由からメロディを重ねるという手もありますが、メロディを2人で演奏させると2人のちょっとしたズレが非常に目立って、思ったとおりの効果が上げられないことが多いようです。3人以上になればそのようなズレも目立たなくなりますが、人数の少ないアンサンブルにおいては1つのメロディに3人も割くわけにはいきません。どうしても音量が欲しい場合などは別ですが、熟達した奏者を2人用意できる状況になければ、あまりお勧めできません。
和音の抜き方
和音から音を間引くときに一番注意すべきは、その和音の持つ雰囲気を崩さないようにすることです。まず重複している音は削る音の第一候補です。ただしその音がメロディの一部であったり、ベースラインである場合は抜くべきではありません。次に和音の雰囲気に最も影響しない第5音の削除を検討します。基本的に根音と第3音は残すようにしましょう。根音がなくなると和音が宙に浮いているような不安定さを感じさせ、第3音がなくなると、長短の区別がなくなり、感情の感じられない無機質な響きになります。もちろん第5音を抜くことによる弊害もあります。第5音が抜けると和音が歯抜けた感じに聞こえたり、重厚さを欠いたりします。とはいえ、これらは根音や、第3音ほど和音の全体の雰囲気に影響を与えるものではありません。
ところでこの3和音以外の付加音があるとき、これらはまず最初に切り捨てて良いのでしょうか?
答えは「いいえ」です。これら付加的な音の和音の雰囲気に与える影響は予想以上に大きいものです。特に付加音は和音の指向性に大きな影響を与えます。以下の例は少し専門的な言葉を用いて説明しますので、わからない場合は読み飛ばしてもかまいませんが、例えばCメジャーの和音に7thが添加されると、和音は次にくる和音として4度上のFメジャーを指向します。普通のCメジャーのように次にGメジャーを指向するということはまずありません。また9thはテンションノートと呼ばれ、この音が添加されると和音に緊張感が生まれ、ひき締まった感じになります。トニックであっても9thが添加されると完全な安定を欠き、終止形として用いても曲がまだ続くような余韻を残すこととなります。一昔前のポップス界では、このような終わり方がもてはやされた時代もありました。このように付加音はほんの少し聴こえるだけで和音の性格をガラリと変えてしまう力のある音ですからむやみに間引けないものなのです。
難しいことを長々と書きましたが、パソコンを使って楽譜を書く場合には、とりあえず鳴らしてみて雰囲気が変わってしまったら別の音を削るといった方法で何とかなります。しかし最初にどの音を削ってみるかと考えた場合に、まずは先に説明した順で音を削ってみると良いと思います。
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