曲の選び方


 編曲という作業は既存の曲に加工することによって初めて成立します。ですからどのような編曲においても、音源または原譜となるものが必要です。では実際に金管アンサンブルの編曲をするにあたってどのようなことに注意して曲を選べば良いのか、編曲のしやすさと演奏効果の両面から解説していきたいと思います。

 まず参考とする曲のメディアですが、これは断然楽譜が便利です。CDやその他の音源も利用できますが、聴音といわれる特殊な技術が必要な上に音を視覚で捉えられず、音を確認するために何度も音源を聴き直さなければなりません。ですから聴音の特別な訓練を受けていない方はもちろん、聴音のできる方にも楽譜からの編曲をお勧めします。日本ではあまり多くありませんが、外国ではインターネット上で無料の楽譜(フリー・スコア)が多く公開されています。また、ネット上ではもっと多くの無料のMIDIが公開されていて、これらはすぐに楽譜化することが可能です。まずはこのようなもので原譜を探してはいかがでしょうか。

 次に編曲しやすい楽譜について解説しましょう。編曲しやすい場合とは、ズバリ希望の編成のパート数と原曲のパート数が一致している場合です。このようなときは、それぞれのパートを音域のあった楽器に振り分けるだけで編曲が完成します。音域が合わない場合でも、オクターブ移動させて他の楽器に渡す程度の操作で完成です。次に原曲のパート数よりも編曲後のパート数の方が多い場合ですが、これも大筋は前述の場合と同じです。ただしこの場合は極端に暇なパートやずっと吹きっぱなしのパートができないよう注意して下さい。逆にうまく振り分ければ、適度に奏者に休みを与えることができて喜ばれる楽譜となります。 また、ここぞというフォルテの魅せ場では音を足して迫力を出すのも良い方法です。音の足し方については応用編の「和音の足し方、抜き方」を参照してください。
編曲例:バレエ2(テルプシコーレ舞曲集より)
原曲:器楽4重奏(楽器指定なし)-> 編曲:ホルン4重奏

アレンジで一番メジャーなのがピアノなどの鍵盤楽器譜からの編曲ですが、これは少し手間がかかります。自分で音を各パートに振り分けなければならないのと、鍵盤楽器が得意とする分散和音や跳躍が、金管楽器の最も不得意とするところだからです。特に鍵盤譜の編曲を行うときは、跳躍と分散和音の少ないものを選びましょう。しかし鍵盤譜の編曲は元の楽譜より音を厚くしたり、いろいろな効果を入れたりと非常に楽しい編曲作業です。
編曲例:ソナタ K.96
原曲:ハープシコード -> 金管5重奏

最後に一番編曲が難しい曲についてお話しします。
そのような曲とはズバリ、もとのパート数が希望の編成のパート数より多い曲です。理由はいたって簡単で、編曲においては音を足すより、音を削るほうがはるかに難しいからです。
意外に思われるかも知れませんが、作曲家というものは基本的に意味のない音など楽譜に書きません。必要最低限しかない音の中から、あえて音を削るには細心の注意を払わなくてはならない上に、どんなにがんばっても原曲よりいい編曲にはなりません。しかも名曲ほど余計な音などないものですから、音を削らねばならないような編曲は決してお勧めできるものではありません。
編曲例:序曲(管弦楽組曲第4番より)
原曲:オーケストラ -> 金管9重奏


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